腹腔鏡下手術
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、体にメスを入れ大きな傷をつけて行う従来の開腹手術とは異なり、5~12mm程度の穴をおなかに複数箇所開けて、カメラや手術器具をその穴から挿入し、モニターに映し出された映像下に行う手術です。術野がモニター画面上に拡大されるため、細かく丁寧な手術操作が可能となることから、以下のような利点が挙げられます。
1)少ない出血量で手術が可能となる
2)開腹手術では困難な深部の手術も比較的容易に行える
3)傷が小さいことから創部の痛みが少なく術後の回復が早い
一方で、以下のような欠点が言われています。
1)手術操作には慣れが必要で、術者に高度な技術が要求される
2)手術操作を行うスペースを確保するために炭酸ガスを使用するため、呼吸と循環に影響を与えることがある
当科では、日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会の泌尿器腹腔鏡技術認定資格を取得した医師が中心となって、根治性と安全性を両立した手術を患者さんに提供しております。
- 腹腔鏡下腎摘除術
1.腎がんに対する腹腔鏡手術
従来の腎臓摘出手術では、腹や脇腹を10~30センチ切開しなければなりませんでしたが、カメラや鉗子を入れるための小さな穴と、切除した腎臓を体外に取り出すための5~7cm(摘出する腎臓の大きさによる)ほどの手術創で摘出できるようになりました。
腎がんの手術には「腎摘除術(全摘手術)」と「腎部分切除術」があります。 腎部分切除術は、腫瘍とその周辺組織のみを切除し、正常な腎臓を温存する手術術式です。腎摘除術後、すなわち片腎となり長期間経過すると腎機能障害の出現リスクが上昇し、そのことに起因する合併症(心血管系の病気や脳卒中など)での死亡率が上昇することが報告されています。そのため、一般的に腫瘍の大きさが4cm以下の比較的小さな腫瘍に対して、腎部分切除術は標準術式となっています(腫瘍の位置によっては、たとえ小さくても部分切除術が不可能な場合があります)。最近では腎機能温存の観点から、腎部分切除術の適応は徐々に拡大されてきており、4cm を超えても技術的には可能とされる報告がみられるようになってきました。
2016 年4月にロボット支援腎部分切除術が保険適応となってからは、7cm 以下の腎悪性腫瘍は部分切除が可能になり、腹腔鏡手術よりも高い操作性や高精細度映像による視認性の向上、そして腹腔鏡手術と遜色ない合併症の頻度や内容などから、ロボット支援手術が標準術式となっています。さらに、2022年4月よりロボット支援腎摘除術も保険適応となり、今後腎がんの外科的治療は多くがロボット支援手術に置き換わるものと思われます。
(「ロボット支援手術」の項参照)
2.腎盂尿管腫瘍に対する腹腔鏡手術
腎盂尿管腫瘍に対しては腎摘除術と同時に下部尿管に膀胱を一部つけて摘除することが標準術式となっています。腎臓は腹腔鏡手術にて腎摘除術を行い、下部の尿管及び膀胱の手術は下腹部に皮膚切開を加えて摘出を行う方法が一般的に行われています。2022年4月よりロボット支援腎尿管摘除術が保険適応となり、本邦での長期的な治療成績はまだ明らかではありませんが、今後確実に普及していくものと思われます。
- 腹腔鏡下副腎摘除術
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、内分泌非活性腺腫、褐色細胞腫などの良性副腎腫瘍に対する標準術式となっています。最近では、転移性副腎腫瘍(肺がんや大腸がん、乳がんなど、ほかの領域のがんが副腎へ転移を起こした状態)に対しても、適応があれば行われるようになっています。
さらに、2022年4月よりロボット支援副腎摘除術も保険適応となり、副腎摘除に対してもロボット支援手術で施行していくことを当科でも検討しています。