経尿道的内視鏡手術
経尿道的内視鏡手術
- 膀胱がんに対する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)
膀胱がんの治療では、まず始めに診断と治療を兼ねてTURBTを行います。尿道から手術用内視鏡を挿入し、病巣部を電気メスで切除し、切除組織の顕微鏡検査でがんの悪性度、深達度などを正確に評価します(病理組織検査)。
- 筋層非浸潤性膀胱がんの治療
病理組織検査の結果、筋層非浸潤性膀胱がんと診断された場合、完全に取り切れていれば治療は完了します。しかし、再発・進行リスクの高そうな患者さんに対しては、術後補助療法として膀胱の中に細胞障害性抗がん薬やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療を行います。再度のTURBTを行うこともあります。
一般に筋層非浸潤膀胱がんの生命予後は良好ですが、TURBT後の高い膀胱内再発率が知られています(30–70%)。この高い再発率の背景には、以下のようなことが考えられています。
- 腫瘍の周りに小さな病変が広がり、正常な部分との境界がわかりにくい
- はっきりと分かる腫瘍以外に、見逃してしまうほど小さな病変がある
- 「上皮内がん」など、正常と思ってしまうような平坦な病変がある
このような分かりにくい病変が分かるようになれば、再発率は必ず下がることが期待されます。これらを解決するために開発された新技術が、「5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた光線力学診断(PDD)」であり、2017年に保険適用となりました。
腫瘍検出の原理は、ヘム生合成における腫瘍細胞の代謝活性の変化に基づいています。5-アミノレブリン酸(5-ALA)が体内に取り込まれると、正常細胞ではヘムに代謝されますが、がん細胞ではその中間産物であるプロトポルフィリンIX(PpIX)が蓄積します。このPpIXに青色の光を当てると、赤色に蛍光発色するという特徴があるため、それを利用することによりがん細胞と正常細胞の区別がつき易くなり、微小ながん細胞の見落としを軽減します。
出典:Inoue et al. Jap J Endourol. 28:187-91, 2015
当科ではこの方法をいち早く取り入れ、5-アミノレブリン酸製剤発売日の翌日に使用開始いたしました。(※本製品の使用は世界初です!)
これまでに多くの患者さんに対して5-ALAによるTUR-BTを施行しており、通常では発見できないような腫瘍性病変を見つけることができており、腫瘍の見逃しが確実に減少しております。間違いなく再発率は低下すると確信しております。
※実際の術中画像(自験例)
左:通常の白色光での観察
右:青色光での観察 腫瘍部が赤くなっており、腫瘍部と正常部の境界が明瞭になっている
左:通常の白色光での観察
右:青色光での観察 このように白色光ではわかりにくい平坦な病変も見つけることができる
左:通常の白色光での観察
右:青色光での観察 このように白色光で正常に見える病変も見つけることができる
- 筋層浸潤性膀胱がんの治療
病理組織検査の結果、筋層浸潤性膀胱がんと診断された場合、転移がなければ膀胱全摘除術(+尿路変向術)が標準治療となります。(「ロボット支援手術」の項参照)
- 尿路結石症に対するレーザー内視鏡治療
軟性尿管鏡を用いてホルミウムYAGレーザーで結石破砕するf-TUL(経尿道的腎尿管結石破砕術)や、大きな腎結石の患者さんにはPNL(経皮的腎結石除去術)を行っています。さらに、PNLでは対応困難な大きな腎結石、珊瑚状結石などの難症例に対しては、PNLとf-TULを組み合わせることで高い治療成功率が期待できる最新治療ECIRS(経皮的経尿道的同時破砕術;PNL+TUL)も積極的に行い、なるべく少ない手術回数で治療が終了可能になるようにしています。
- 前立腺肥大症に対する内視鏡治療
前立腺肥大症に対する手術では、通常の経尿道的前立腺切除術(TURP)以外にも、高出力のホルミウムYAGレーザーを用いたHoLEP手術を行っています。