腎癌
腎癌について
腎臓は尿をつくる臓器で上方の背中に左右一つずつあります。多量の血液が流れ込み、不純物をろ過することで尿として排出します。その他にも、血圧を調節したり、ビタミンDの活性化を起こしたり、造血ホルモンの生成にも関わっている重要な臓器です。腎癌はこの腎臓の皮質内の尿細管上皮細胞から発生すると考えられています。
診断
古典的には血尿、背部痛、腹部腫瘤などが発見の契機としてあげられますが、最近では無症状のうちに人間ドックでの腹部超音波検査や他の病気の検査でのCTやMRIで偶然発見されることが増えています。
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腹部超音波検査
腹部超音波検査は外来で簡便に行うことができるので、肉眼的血尿や尿潜血陽性を認めた場合にまず行う検査です。超音波検査機器の性能が向上しており比較的早期でも発見されることが増えてきています。
CT、MRI
腎癌の診断確定目的や進行度を診断する目的で行います。3cm以下の非常に早期の癌の場合診断が困難であることもあります
経皮的針生検
画像的に診断が困難な場合や、治療方針を決定する際に癌の組織型を確認する必要がある場合に針で腎臓を刺して組織を取ってくる検査法です。超音波やCTで場所を確認しながら安全な場所を採取します。
治療法
手術療法
ある程度の大きさの腎癌の場合、癌のある腎臓を全て摘出する腎摘除術の適応となります。可能な限り体への負担が少ない体腔鏡下手術を行いますが、体腔鏡下手術が安全に行いないと判断される場合には、開腹手術を選択します。比較的小さな腎癌の場合、腎臓の機能をできる限り温存するために腎臓を全て摘出せずに癌にわずかな周囲の正常組織をつけて摘出する、腎部分切除術を積極的に行っています。
分子標的薬
主に遠隔転移を来している腎癌に対して全身療法として行われます。全ての細胞に作用する抗がん剤とは異なり、癌細胞に特有なタンパク質などを標的とすることで癌細胞のみに作用することを目的とした新しい薬剤です。腎癌に対しては2008年以降日本国内で使用開始しています。癌細胞のみを標的としていますが、分子標的薬特有の副作用があるため、治療導入は入院で行います。安全に投与できることが確認できれば、退院して外来での治療継続となります。
免疫療法
腎癌は癌の発生や進行が免疫と関わっていることが知られており、免疫療法が広く行われていました。インターフェロンやインターロイキン2が主な薬剤で、リンパ球などを活性化することで癌細胞を破壊することを目的とします。前述の分子標的薬が出てくる以前は腎癌に対する薬物療法は免疫療法しかありませんでした。現在では分子標的薬を選択する機会が増えましたが、免疫療法も症例によっては治療選択肢になり得ます。