腎癌
腎癌について
腎臓は尿をつくる臓器で左右の背中に一つずつあります。多量の血液をろ過することで尿産生します。また、血圧を調節し、ビタミンDの活性化や造血ホルモンの生成にも関わる重要な臓器です。腎癌はこの腎臓の皮質内の尿細管上皮細胞から発生すると館得られています。
腎癌は成人のがんの約2~3%を占め、男性に多く発生します。また、喫煙者では発生率が非喫煙者の約2倍となります。多くの人は50~70歳で発症します。
診断
腎癌の初期症状はほとんどなく、そのため以前は早期発見が困難でした。しかし、近年では画像検査の普及に伴い、他の疾患の検査の過程で偶然発見されることが多くなっています。
腎癌が大きくなると血尿、腹部のしこりや背中・腰の痛みなどが出現することがあります。
また、各種臓器に転移した場合は転位部位に応じて、様々な症状が出現します。
腹部超音波検査
超音波を体の表面に当てることで癌の位置や大きさなどを評価します。
CT、MRI
腎癌の診断目的や進行度を評価するために行います。より正確に診断するために造影剤を静脈内に注入して検査することも多いです。また、癌が腎臓以外に転移しないか調べるためにも行います。
経皮的針生検
本当に癌かどうか、癌の悪性度などを調べる目的に行います。細い針を刺して細胞を採取して診断します。画像検査で判断が難しい場合に行います。
治療法
手術療法
根治的腎摘除術
癌を取り除くため癌組織と腎臓をまとめて摘出します。片方の腎臓を摘出しても、残った方の腎臓が正常であれば日常生活に支障はありません。開腹手術と腹腔鏡手術、ロボット支援手術があり、それぞれ長所と短所がありますが、腫瘍の大きさや患者様の個々の状態や既往歴をなどから適切な方法を選択いたします。
腎部分切除術
癌が生じている部位を部分的に切除する術式です。最大のメリットは腎機能を温存できることです。多く場合は癌の大きさが4cm以下の場合に適応となりますが、癌の位置によっては困難な場合があります。部分切除術も開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術により行われますが、大部分はロボット支援手術が選択されます。
凍結療法・ラジオ波焼灼療法
癌が小さい場合、癌とその周囲に対して行う治療です。癌組織を凍結させて死滅させる凍結療法と反対に熱により腫瘍を破壊するラジオ波焼灼療法があります。両方とも局所麻酔下で体の表面から針を刺して行います。体への負担が少なく、手術を希望しない、もしくは年齢や合併症により手術の危険性が高い患者様に対して行います。
放射線療法
放射線治療は、癌組織に対して放射線を当てることで死滅させ、進行を抑制し疼痛を軽減させます。多くの場合は痛みなどの症状の緩和に用いられますが、手術や凍結療法・ラジオ波焼灼療法を行うことが困難な患者様に根治的な治療を目的として行うことがあります。
薬物療法
遠隔転移を来たしているなど手術療法などで癌を取り除くことが困難な場合に行います。腎癌は一般的な抗がん剤は効きにくく、以下のような治療が行われます。
分子標的薬
癌細胞の増殖に関わる蛋白質や癌組織に栄養を供給する血管などを標的とする薬剤です。2008年以降様々なタイプが発売され、広く使用されています。癌を狙い撃ちすることを目的としていますが、副作用は存在し高血圧・倦怠感・下痢・皮膚炎など生じます。
免疫チェックポイント阻害薬
人体の癌に対する免疫機能に働きかけることにより癌細胞を攻撃する薬剤です。2014年に初めて発売され、先の分子標的薬とともに順番に、もしくは同時に使用されるなど広く普及しています。また、転移などがなくても手術で癌を取り除いた後に再発の危険性が高いと判断される患者様に対して使用されることがあります。副作用は体の免疫細胞が正常な組織に攻撃することにより発生し、様々な症状を呈することがあります。