世界初!アミノレブリン酸内服製剤による光線力学診断 (PDD)を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-BT)を行いました!(2017/12/20)
その他
2018.02.21
膀胱がんを光らせて見つける!
アミノレブリン酸による光線力学診断 (PhotoDynamic Diagnosis: PDD) を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TUR-BT)
【膀胱癌は再発率が高い!】
膀胱癌の治療では、まず経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を行います。術前の画像診断や、TUR-BTでの病理診断の結果によって、表在がん・浸潤がんが区別されます(図1)。
表在がんでありTUR-BTで腫瘍が取りきれたと判断された場合は、基本的に追加の手術をせず経過を見ます。浸潤がんと判断された場合は、深層に腫瘍が残存していますから、膀胱全摘などの追加治療が必要となります。
表在がんであっても、その再発率の高さが問題となっています。再発リスクの低いものでも3割程度、再発リスクの高いものになると8割近くの患者さんが再発をきたし、再びTUR-BTを行わなければならなくなります。これほど再発率の高いがんは他にありません。
それゆえに、表在がんの患者さんは、TUR-BT後に以下の検査・治療が必要になります。
・原則として3か月ごとの膀胱鏡検査・尿細胞診が必要
・再発予防のための治療が必要 例:膀胱内注入
・場合によっては2-3か月後にふたたびTUR-BTが必要
3か月ごとの膀胱鏡検査を受けるのは、なかなか大変ですし、再発予防の治療というのも副作用が時々起こります。再発を繰り返し、10回以上TUR-BTを受けねばならない患者さんもおられます。
【なぜ再発率が高いのでしょうか?その理由は】
- 腫瘍の周りに小さな病変が広がり、正常な部分との境界がわかりにくいこと
- はっきりと分かる腫瘍以外に、見逃してしまうほど小さな病変があること
- 「上皮内がん」など、正常と思ってしまうような平坦な病変があること
であると考えられています。
【アミノレブリン酸で腫瘍を光らせる!】
分かりにくい病変を分かるようにすれば、再発率は必ず下がるはずですよね。そこで、アミノレブリン酸による光線力学診断 (PDD)によって、普通ではわかりにくい病変を見つける方法が高知大学を中心に考案・開発され、2017年12月19日より膀胱癌の手術でも使用することができるようになりました!
正常細胞では内服したアミノレブリン酸がミトコンドリア内でヘムに代謝されます。しかし腫瘍細胞ではこの働きが機能しておらず、ミトコンドリア内でプロトポルフィリンⅨという物質が多量に蓄積します。専用の青色光を当てると、このプロトポルフィリンⅨという物質が赤く光ります。
つまり、腫瘍細胞のみが赤く光るわけです(図2)。
当科でもこの方法をいち早く取り入れるべく準備を進め、2017年12月19日のアミノレブリン酸製剤発売日の翌日に使用開始いたしました。※本製品の使用は世界初です!2月末までに17名の患者さんに対してアミノレブリン酸によるTUR-BTを施行しました。そのうち多くの患者さんで、通常では発見できないような腫瘍性病変を見つけることができており、腫瘍の見逃しが確実に減少しております。間違いなく再発率は低下すると確信しております。