ごあいさつ
150年以上もの歴史のある金沢大学医学類の中で、1955年に設立された泌尿器科学教室の第4代教授を2016年8月に拝命いたしました溝上です。先代の教授が残してくれた数々の伝統・業績を重んじながら、金沢大学泌尿器科学教室をさらに発展させ、優秀な泌尿器科医を育てて金沢ブランドを国内・海外に広めたいと考えております。
泌尿器科は基本的には外科の分野ですが、実際にはその内容は、悪性腫瘍(腎、膀胱、前立腺、精巣など)、排尿障害、尿路結石、腎移植、感染症、小児外科、女性泌尿器科、生殖医療、アンドロロジーなど、内科的な分野から外科的な分野まで多岐にわたっています。内科に多くの分野があるのと同様です。つまり、泌尿器科医となってからどの専門分野に興味を持って診療を行っていくのか、自分自身でさらに決めていく必要があります。手術の内容においても、ロボット支援手術から腹腔鏡・内視鏡、開腹手術、マイクロサージェリーに至るまで多くの手術があります。また、金沢大学の泌尿器科は大学院の講座名が「泌尿器集学的治療学」となっています。この講座名は、特に悪性腫瘍において、単一の方法で治療するだけでなく、外科的治療から内科的治療にいたる様々な治療法をうまく組み合わせて、患者にQOLを重視した最適な医療を提供するという目的で銘々されました。すなわち、泌尿器科は様々な治療を駆使して診療している科なのです。
医学の発展のためには臨床面だけではなく、基礎研究、臨床研究は絶対必要なものです。研究というのは地道で単調な作業も多く、研究成果がすぐ臨床に反映しないことも多々あります。しかし、将来これらの研究がいつか患者の生命予後改善やQOL改善などに役立つとすれば、とてもやりがいのあるものになります。また研究を行うことは科学的な思考能力を養う上で極めて有用な手段でもあります。金沢大学泌尿器科学教室には、これらの研究を行うための下地が十分整っています。つまり、金沢大学泌尿器科学教室は、診断から治療、研究に至るすべてがそろっている教室だと思います。ただ、忘れてならないのは、患者への「思いやりの心」です。機械的な作業だけでは患者は治りません。精神的にも患者を支えていくことが重要です。当たり前のことのようですが、医者を長い間続けて、コンピュータ化された医療の世界にいると、その気持ちがなくなってしまいがちです。私は、「思いやりの心」を常に持った上で、診療・研究が両立できる泌尿器科医を育てていき、地域医療に貢献して、世界にも展開していきたいと思います。是非ともこの金沢大学泌尿器科学教室の伝統を一緒に発展させていきましょう。